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海外ドラマではないのであしからず
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ニーア文です。なぜ今、ここで、ですが。
面白かったです。
3周目クリア前提ですが、直接的なバレはありません。たぶん。
ニーア良いですよ。







「2Bは釣りが好きですねぇ〜」
声と同時に、パシャン、と音が聞こえて、2Bは音がした方を見た。
「感情を持つことは禁止されている・・・」
9Sの軽口が過ぎることと、好きで釣りをしているわけではないことを、言外に示したつもりだった。
「でも最近、任務がない時は釣りばっかりじゃないですか。」
どこか拗ねたような声音だった。
やはり、彼は過ぎる・・・
「・・・チップや備品を揃えるのもタダじゃない」
「わかってますよ。釣った獲物は貴重な資金源ですし、任務へは常に最高のパフォーマンスができる状態で臨むべきです。」
でもな〜そうは言ってもな〜、と9Sはひとりごちている。
またパシャン、と音がした。9Sが蹴飛ばした石ころが海に落ちた音だ。
露出された口もとに、思わず微笑が浮かんだ。
「何か他にすべきことがあるなら、それを優先させてかまわないけど」
「すべきことっていうわけじゃ・・・」
「じゃあ何」
「うーーーん・・・すべき、じゃなくて」
背後から歩み出てきた9Sが縁に立った。
そしてくるりと2Bを振り返る。反応を見逃さないとでも言うように正面から向き合い、得意げな笑みを隠そうともしない。
自分は絶対にしない。彼特有の立ち振る舞い。何故、一体なぜ、こんな人格設定をしたのか。
眩しい。苦しい。悲しい。
ーーー感情を持つことは禁止されている
こんな思いを、するなんて
これはーーー
「すべきことじゃなくて、したいことです!」
「したい、こと・・・」
そうです、と勢い込んでこちらを見つめている。
「 君は・・・そんなことばかり」
ため息をつく2Bの言葉を遮るように、9Sはまくし立てた。
「僕は2Bと、もっと色んなものが見たいです!」
「・・・」
その言葉をどう捉えるべきか思考していると、9Sははっとして顔を逸らした。そしてやや言い訳めいた言葉を続ける。
「ほら、前に言ったでしょう?僕たちスキャナーモデルは単独行動ばかりだから、誰かと組めるのは嬉しいって・・・あ、いや、もちろん誰でもいいってわけじゃないですよ!」
「・・・・・・」
「だって、ほら・・・」
9Sは腕で前方を示した。
どこまでも広がる液体の流体運動。その光の反射。その音。
「この先に何があると思います?」
「ポッドに聞けばすぐわかるんじゃない」
ポッド042は、今は釣りのために遠くで液体に浸かっているので聞けないが、9Sの153に聞けばすぐわかることだ。
大昔の地球の地図のデータなら見たことがある。必要がなかったので確認していないが、どんな大陸がこの先にあったのか、今はどんな有様か、知ることができるだろう。
「そういうことじゃないんです!」
「・・・」
2Bは頭が硬いんですから、とでも言いたげだ。
「自分の目で見てみたいと思いませんか?」
大変魅惑的な誘いであるかのように、9Sは、2Bを覗き込んだ。このゴーグルに覆われた、何も映さない黒を。
思わず、息を呑む。
あぁ、君のそういうところ・・・
たまらなくなる。
「飛行ユニットさえ自由に使えればな~」
やめて
「今度オペレーターさんにこっそりお願いしてみようかな?」
その好奇心が、あなたを
「ねえ、2Bもオペレーターさんに」
私を
「2B?」
「・・・無理に決まってる。飛行ユニットは運用コストが」
「わかってますよ。でも聞いてみるくらい、いいじゃないですか。聞くだけならコストはかかりませんよ。あ、21Oさんには無駄口たたくなって怒られちゃうかな・・・」
怒られるのを大して気にしているわけでもないのだろう。口元はほころんだままだ。
「9Sは・・・そんなにこの海の先に行きたいの?」
9Sはどこかきょとんとした顔でこちらを向いた。
「え、それは、まあ・・・2Bは行きたくないですか?」
「・・・・・・任務に必要ないなら・・・」
彼の望む、“私の願望”ではない。考えた末の、慎重な言葉。
だが9Sは、さっぱりとしたものだった。
「わかりました。じゃあ別のところへ行きましょう!」
「え、・・・でもこの海の先へ行って、見ることが9Sのしたいことなんじゃないの?」
「もちろんそれも見てみたいですけど、いいんです。」
肩すかしを食らった気分。心配したのに。彼の気まぐれだったか。
「だって僕は2Bと同じものを見たいだけですから」
ーーー僕は2Bと、もっと色んなものが見たいですーーー
はっとして顔を上げると、海へ臨む9Sの後ろ姿があった。
その好奇心。その思考能力。
その、いつも、いつだって、真理へと向かっていく聡明さ。
優しさ・・・
もしかして、気づいているのだろうか。
そんな疑念がふとよぎる、見慣れた細い背中。
私も、君と同じものを見たいーーー
これはーーー



これは呪いか。それとも罰か。


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